毎日の転記や通知、システムへの登録を自動化したいと考えたとき、候補に挙がるのがRPAとAIワークフローです。どちらも「人が手で繰り返している作業を、仕組みに任せる」ためのものですが、動かし方が違うため、向いている業務も違います。
結論を先に書くと、決まった画面を決まった手順で操作する作業はRPA、複数のサービスをつないでデータを受け渡す作業や、文章を読んで判断する作業はAIワークフローが向いています。この記事では、両者の仕組みの違い、自社の業務でどちらを選ぶかの判断基準、組み合わせ方を説明します。
RPAとAIワークフローの違い
まず、両者の違いを表にまとめます。
| 比較項目 | RPA | AIワークフロー |
|---|---|---|
| 動かし方 | 人がパソコンの画面で行うクリック・入力を、ソフトウェアが再現する | サービス同士を、API (システム同士がデータをやり取りする窓口) でつなぐ |
| 作り方 | 操作を記録したり、画面の項目を指定したりして手順を作る | 「何が起きたら、何をするか」をブロックの組み合わせで作る。AIに文章で伝えて組み立てる製品もある |
| 判断が必要な処理 | 決めたルールのとおりに動く。ルールに無い例外が来ると、処理が止まるか人に戻す | 文章の要約・分類など、判断の一部をAIに任せられる |
| 変更への影響 | 操作する画面のボタンの位置や項目名が変わると、手順の修正が必要になることがある | つなぐ先のサービスのAPIの仕様が変わると、設定の修正が必要になることがある |
| 向いている業務 | APIの無い社内システムへの入力、決まった帳票の作成 | 通知・登録・記録など複数のサービスにまたがる作業、メールや問い合わせの内容に応じた振り分け |
どちらが優れているかではなく、作業がどこで行われているか (画面の上か、サービスの間か) と、判断がどれだけ必要かで選ぶのが基本です。
RPAとは:画面操作を再現する仕組み
RPA (Robotic Process Automation) は、人がパソコンで行う操作を、ソフトウェアロボットが代わりに実行する仕組みです。画面を開く、項目に値を入力する、ボタンを押す、といった手順を記録し、同じ手順を繰り返し実行します。
RPAでできること
- 表計算ソフトの値を、社内システムの入力画面へ転記する
- 毎朝決まった時刻にシステムから帳票を出力し、決まったフォルダへ保存する
- 複数のWebサイトから決まった項目を集めて、一覧にまとめる
共通するのは、画面と手順が決まっていて、毎回同じ判断で済む作業であることです。
RPAのメリットとデメリット
メリットは、つなぐ先のシステムにAPIが無くても自動化できることです。古い社内システムや、外部から接続する仕組みを持たないソフトウェアでも、人が画面で操作できるものなら対象にできます。
デメリットは、画面の変化に影響を受けやすいことです。システムの更新でボタンの位置や項目名が変わると、手順の修正が必要になることがあります。また、ルールに無い入力 (表記の揺れ、想定外の内容) が来たときの扱いは、あらかじめ手順に書いておく必要があります。自動化する作業が増えるほど、手順の保守を誰が担うかを決めておくことが大切になります。
AIワークフローとは:サービスをつなぎ、判断の一部をAIに任せる
ワークフローの考え方では、業務を「何が起きたら (きっかけ)、何をするか (処理)」のつながりとして捉えます。たとえば「問い合わせフォームに回答が届いたら、内容を表計算ソフトに記録し、担当者のチャットに知らせる」という流れを1つにまとめ、自動で動かせるようにしたものがワークフローです。
AIワークフローは、この流れの中にAIの処理を組み込んだものです。届いた問い合わせの文章を読んで要約する、内容から「見積もり依頼」「不具合の報告」などに分類して、振り分け先の担当者を変える、といった人が読んで判断していた部分をAIに任せられます。
画面を操作するRPAと違い、ワークフローはサービス同士をAPIでつなぎます。画面の見た目が変わっても動き続けやすい一方で、APIを持たないシステムはつなげません。
iPaaSとの関係
iPaaS (アイパース) は、複数のクラウドサービスをつないでデータを受け渡すための、クラウド上の連携サービスです。サービス同士をつないで流れを作るという点で、ワークフローの仕組みとよく似ています。AIワークフローは、この「つなぐ」仕組みに、AIによる要約・分類などの処理を加えたものです。
どちらを選ぶか:業務別の判断基準
自社の業務でどちらを使うかは、次の3つの問いで考えると整理できます。
- つなぐ先のシステムにAPIや連携の仕組みがあるか あればAIワークフローでつなげます。APIが無く、画面からしか操作できない場合はRPAが向いています。
- 作業が1つのシステムの中で終わるか、複数のシステムやサービスにまたがるか 1つの画面の中で入力を繰り返す作業はRPA、「受け取る → 記録する → 知らせる」のように複数のサービスにまたがる作業はAIワークフローが向いています。
- 人が読んで判断している部分があるか メールや問い合わせ、通話の内容のように、文章を読んで振り分けたり要約したりしている作業は、AIの処理を組み込めるAIワークフローが向いています。決まったルールだけで済むなら、どちらでも自動化できます。
業務の例で当てはめると、次のようになります。
| 業務の例 | 向いている仕組み | 理由 |
|---|---|---|
| 受注データを、APIの無い基幹システムに毎日入力する | RPA | 画面からしか入力できない |
| 問い合わせフォームの回答を記録し、担当者へ知らせる | AIワークフロー | 複数のサービスにまたがる |
| 問い合わせの内容を読んで、担当部署へ振り分ける | AIワークフロー | 文章を読んで判断する |
| 毎月決まった帳票を出力し、決まった場所に保存する | RPA | 決まった画面と手順で済む |
RPAとAIワークフローを組み合わせる考え方
RPAとAIワークフローは、どちらか一方に絞る必要はありません。両方を使う場合は、役割を分けて、つなぎ目をはっきりさせることが大切です。
- サービス同士の受け渡しと、文章を読んで判断する部分は、AIワークフローに任せる
- APIの無い社内システムへの入力だけを、RPAに任せる
- 両者の間のデータの受け渡しには、表計算ソフトや共有フォルダなど、どちらからも読み書きできる場所を使う
すでにRPAを使っている場合は、RPAの手順のうち「例外が多くて止まりやすい部分」「人が内容を読んで判断している部分」を洗い出すと、AIワークフローに移す候補が見えてきます。逆に、画面からしか操作できない部分は、現時点では無理にワークフローに置き換えず、RPAに残すほうが確実です。
これから:AIが画面を操作できるようになると
ここまでの判断基準は、「APIの無いシステムはRPA」という今の前提に立っています。この前提は、AIの進歩によって変わりつつあります。
AIが人と同じようにブラウザの画面を読み取り、クリックや入力をする技術が出てきています。RPAのように手順を1つずつ決めておくのではなく、「この画面に注文の内容を入力して」といった指示を受けて、AIが画面を見ながら操作します。ボタンの位置や項目名が変わっても、AIがその場で画面の内容を判断できれば、手順を修正せずに動き続けられる可能性があります。
今はまだ、1回の操作に時間がかかり、費用も高くなりやすいうえ、同じ指示でも毎回同じ結果になるとは限りません。大量の決まった入力を速く確実にこなす作業は、今もRPAが向いています。
一方で、AIの性能が上がり利用料金が下がるにつれて、APIの無いシステムの画面操作も、AIワークフローの処理の1つとして組み込めるようになっていくと考えられます。そうなれば、「APIがあるかどうか」で仕組みを使い分ける必要は小さくなり、画面の操作を含む業務の流れも、AIワークフローでまとめて組みやすくなります。これからRPAを導入・拡張する場合は、手順の保守にかかる手間に加えて、この変化も考えに入れたうえで、どこまで手順を作り込むかを決めるとよいでしょう。
AgenFlowのAI業務フローでできること
AgenFlow (エージェンフロー) の「AI業務フロー」は、サービス同士をつなぐ方式のAIワークフローで業務を自動化するサービスです。
やりたいことを文章で伝えると、AgenFlowの画面で業務を手伝うAI (AI社員) が業務フローを組み立てます。たとえば「通話結果を顧客管理システムに登録して、担当者にSlackで知らせたい」と伝えるだけで、流れの下書きができます。組み立てたフローは画面で確認・調整できます。
つなげる先は、Slack・kintone・Salesforce・Google スプレッドシートなどです。つなげるサービスは連携できるアプリの一覧で確認できます。業務フローは手動で実行できるほか、決まった日時に動かすスケジュールや、外部のサービスから合図を受けて動かすWebhook (ウェブフック) をきっかけにして動かせます。実行した業務フローの結果は、履歴で確認できます。
業務フローの中には、AIの処理も入れられます。届いた問い合わせの文章をAIで要約したり、内容で分類して知らせる担当者を変えたりできます。
電話の受付・発信を担う「AIオペレーター」と組み合わせると、電話で聞き取った用件を、記録や通知、システムへの登録へつなげられます。
業務フローの作成と実行は、フリープランで試せます。プランごとの内容は料金をご覧ください。
まとめ
- RPAは、人が画面で行う操作を再現する仕組みです。APIの無いシステムへの入力など、画面と手順が決まった作業に向いています。
- AIワークフローは、サービス同士をつなぎ、文章の要約・分類など判断の一部をAIに任せる仕組みです。複数のサービスにまたがる作業や、内容を読んで振り分ける作業に向いています。
- 選ぶときは「つなぐ先にAPIがあるか」「作業が複数のサービスにまたがるか」「人が読んで判断している部分があるか」の3点で考えます。
- 両方を使うときは、役割を分け、受け渡しの場所を決めておくと保守しやすくなります。
- AIによる画面操作の性能が上がり費用が下がれば、今はRPAが担っている作業の一部も、AIワークフローで扱えるようになっていくと考えられます。
まずは、毎日手で繰り返している作業を1つ選び、「どこで行われているか」「判断が必要か」を書き出すところから始めてみてください。


